「藤沢周平とっておき十話」を読む

15.01.02


 お正月休みはいいものです。ときどき、テレビのお笑い番組で休憩しながら、澤田勝雄さんの「藤沢周平とっておき十話」を読みました。

 著者の澤田さんは、藤沢周平の縁戚の人で、長年、しんぶん赤旗編集局に働いた人です。しんぶん赤旗と藤沢周平をつないだ人の一人なのでしょう。
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 同書に、1976年11月の総選挙の際に、「日本共産党・革新共同の躍進を期待します」との藤沢周平の談話が紹介されています。その選挙には、藤沢周平の山形師範学校時代の友人で、日本共産党の山形県議だった小竹輝弥さんが、山形2区から立候補しています。ちょうど地元の鶴岡市の校長会などに講演で呼ばれていた藤沢周平は、「私には、似合わないこと」と思いつつ、おそらく生涯最初で最後の選挙の応援演説をしています。

 「赤旗」に掲載された藤沢周平の談話がまた素晴らしい。

 「私は政治も政党も深く知らない人間である。だが今度共産党から立候補する予定の友人を、長い間見てきて、政治とはこういうもので、政党とはこういう人間の集まりであるべきではないかと思うことがあった。/人は、万策つきたと感じたとき、あと頼るのは政治しかないと思うことがある。たしかに橋も道路も人間には必要だろうが、そういうもの以前の、もっとぎりぎりの立場で、いま現在のようでない政治に救いをもとめることが人間にはある。/私が言う友人は、いつもこのぎりぎりの人間の願いをくみ上げようとしてきたように見える。彼の当選と、彼のような人間が所属する党の躍進を、今度の選挙では期待する。」

 小竹輝弥氏について、のちに藤沢周平は「あなたのことを考えるときいつも思い出すのは、あなたが政治的な信条のために山形師範を卒業したものの教職につけなかったときのことです。あなたは鶴岡で文房具の販売をはじめ、私が勤める湯田川中学校にも回ってきました。/私はそのころ、職員室であなたと二人きりでむかい合って話したことをおぼえていますが、そのとき少しはあなたから文房具を買ったでしょうか。その記憶はなくて、いまも私の心に残るのはそのときに感じたうしろめたい気持ちです。私はあなたとむかい合いながら、政治的な信念のために逆境にいる友人を見て見ぬふりをし、自分だけはぬくぬくと教師生活に安住していることを、みずから恥じないわけにはいきませんでした。」と書いています。(小竹輝弥さんの自治功労賞・永年勤続議員表彰に際してのメッセージ、1987年2月)

 「政治は人間を包含しきれないのではなかろうか」との疑いを持ちつつ、政治とは、一線を画してきたかに見える藤沢周平は、それでも「よりよい政府が出来、いい政治をしてくれることを期待する気持は人後に落ちない。疑いながらも、いつかもっとよくなるだろうと期待しないわけにはいかない。/そういう期待の支えになるのは、歴史の進歩ということである。複雑怪奇な軌跡を残しながらも、人間集団は少しずつ進歩してきた。もはや奴隷を首切る専制君主は現れないだろうし、封建制度の世の中に戻ることもないだろう。人間が人間らしいゆとりを持って生きられる時代がくるだろうと、それを政治に期待し、望むのは正しいのだと私は思う。昔からそういう望みが、少しずつ人間を解放し、歴史を進歩させてきたのである。/こういう人間の望みを汲みあげ、現実に生かして行くのが、政治の原型だろうと思う。私が政治家としてのO氏(小竹氏のこと=小松)を尊敬するのは、そういうことである。O氏は人間の政治に対するナイーブな願望を、政治の上に生かそうと懸命であるだけでなく、彼自身政治とはそうしたものでありたいと願っていると私には見える。」(「雪のある風景」)と語ります。小竹氏を通してではあるけれど、そこにはまともな政治をめざして奮闘する日本共産党への率直な期待と評価も含まれているのではないでしょうか。

 藤沢周平は、ある雑誌の対談で、こうも語っています。「戦争の後遺症ということで言えば、『日の丸』『君が代』の特に『君が代』にいまもって引っかかるものがあります。みんなで歌う場合、一応立つんですが、どうしても声が出てこない。やはりあの歌詞に拘りがある」と。健在であれば、安倍政権の危険な暴走に、きっと静かな、しかし手厳しい警鐘を鳴らしたに違いありません。

 先の総選挙での日本共産党の躍進を、藤沢周平もきっと喜んでくれているのではないでしょうか。

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