加藤文三著「渡辺政之輔とその時代」や不破哲三著「スターリン秘史」その他

15.08.25


 教育者であり歴史研究者である加藤文三さんの「渡辺政之輔とその時代」をようやく読み終えました。出版直後の2010年の「赤旗まつり」のときに、加藤さんの奥さんが千葉県のテントで販売していて、購入したものですが、なんのかんのと後回しにしていました。
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 「渡政」の愛称で親しまれた叩き上げの労働者であり、稀代の労働運動の指導者。やがて、戦前、非合法時代の日本共産党の委員長に就任、台湾の基隆(キールン)港で官憲に取り囲まれ、自決。というくらいの知識はありましたが、それ以上のものではありませんでした。

 第一章「おいたち」から始まりますが、学術的な記述について行けずに、読み進めるのにずいぶん時間がかかりました。しかし、章を追うごとに、時代の息吹や非合法時代の労働者や知識人たちの命がけのたたかいのその姿に魅了され、「渡政」を中心とした「日本共産党史の群像」を読むような感がありました。

 今は、病気のために外出もままなりませんが、加藤さんのお宅とはご近所で、お元気なころには私の議会報告会などに律儀に出席いただくなど、本当にお世話になりました。回復を心からお祈りしています。

 さて、この間の読書。圧巻だったのはやはり不破哲三さんの「スターリン秘史」1~3巻でした。
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 こちらは、文字通り膨大な資料からスターリンの巨悪を暴きだす、壮大な歴史ドキュメントです。独裁を確立していくためのおぞましいまでのテロル、社会主義の言葉で粉飾された社会主義とはまったく無縁・対極にある異常なまでの領土拡張主義、みずからのその野望のために謀略に謀略を重ねて、コミンテルンを私物化し、各国共産党を使い捨て同様に利用する、そのスターリンも、異常な領土欲をヒトラーに見透かされ日独伊三国同盟を利用した策略にはまり、ドイツの侵攻をまともに受ける結果になります。社会主義の権威を地に貶めただけでなく、世界の共産主義運動を無残に歪め、破壊した巨悪は、いまなおその爪痕を深く現代に残しています。たった一人の人間の狂気ともいえる権力欲と領土拡張主義が、こんなにも世界の進歩の妨げになる、世界史を遅らせることがある。憤りを通り越して、悲しくさえなりました。第4巻以降の出版が待たれます。

 あとは、大好きな歴史・時代小説。かつて、火坂雅志さんの「虎の城」や「墨染めの鎧」について書きましたが、「真田三代」(上・下)や伊達正宗を描いた「臥竜の天」(上・中・下)も、面白い読み物でした。大大名の狭間で知恵のかぎりを尽くして生き残りを戦う中小戦国大名の悲哀や時代にやや遅れて登場したが故に天下の夢をつかみ損ねた独眼竜の悲哀。火坂雅志さんの地方からの視点がおもしろいと思いました。
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 この火坂雅志さんのわくわくするような英雄譚とは、まったく肌合いを異にするのが、やはり若くして亡くなった山本兼一さんです。

 直木賞の「利休にたずねよ」を読んだときには驚きました。切腹の朝から書き起こして、生涯をさかのぼっていく。こんな書き方もできるのかと思いました。
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 「おれは清磨」「いっしん虎鉄」は、刀鍛冶の話。「花鳥の夢」は、絵師狩野永徳。「火天の城」は、信長から安土城築城を託された棟梁、岡部又右衛門。当代一流の腕を持つ者たちの生きざまが描かれます。面白いのは、それぞれの主人公が決して、「素晴らしい人物」とは描かれていないこと。「おれは清磨」という書名に表れているように、清磨は、鼻持ちならないほどの自信にあふれたイヤな奴。「花鳥の夢」の永徳も、長谷川等伯の実力におびえながら、それを抑え込むためにさまざまな策略をめぐらします。山本兼一さんが、この「花鳥の夢」を書いているちょうどそのとき、安部龍太郎さんが「等伯」を連載していたというのも、面白い話です。

 その山本さんが「役小角絵巻 神変(じんべん)」という作品を書いているのもまた面白いことです。持統天皇や藤原不比等らが進める国づくりに、「世の中のすべてが、自分たちに従うと思っていたら大間違いだということを教えてやる。」と、立ち向かう役小角。痛快な前半に比べて後半は、やや奇想天外な展開になっているのが残念な気がしましたが、面白く読みました。

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