「空洞化と属国化」(坂本雅子著)など、最近の読書

18.09.17


 先日、坂本雅子さん(名古屋経済大学名誉教授)の大著「空洞化と属国化」(新日本出版社、本体価格5600円)を読みました。

 さまざまなデータを存分に活用し、日本経済の空洞化の現状を分析するとともに、アメリカ政府と一体になった米国大企業の要求に、文字通り「属国」のように唯々諾々として従い、日本企業の競争力や経済そのものを破壊され、にもかかわらずさらにその道を突き進もうとしている日本政府の政策に厳しい警告を発しています。

 まず序章「日本経済と産業空洞化」では、1990年代から現在までの日本経済の停滞・衰退の最大原因が、製造業の衰退にあること。それは生産の海外移転に原因があること。その結果、日本がもはや生産面でも輸出面でも、中国をはじめとしたアジア各国に劣後し、後退してしまっていることをさまざまな数値とグラフを駆使して明らかにしています。
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 2014年の海外生産比率⦅海外生産額÷(国内生産額+海外生産額)⦆をみると、国内全企業の生産に対して24.3%になっています。自動車では、46.9%、つまり国内生産額に匹敵する額が海外で生産されているということです。それは当然、雇用にも深刻な影響を与えていて、製造業の就業者数でみると、ピークの1992年10月の1418万人から、2012年には、952万人へと激減しています。同じ期間に、海外の日本企業の従業員数は、415万人増えているというのですから、何をかいわんやです。

 第1章「日本電機産業の敗北――生産の海外移転が行きつくところ」では、最も早くからアジアへの生産移転を加速させた電機産業が、どんな結末を引き起こしたか、を分析。国内生産の壊滅にとどまらず、日本企業そのものの崩壊や外国企業による併合で、電機産業全体が日本から消滅する危機に瀕していることが解明されます。これは、序章で使われた数値(表)ですが、パソコンの世界生産のシェアの状況ですが、いまや97.9%が中国。日本は、わずか1.6%に落ち込んでいます。スマートフォンを含む携帯電話は、やはりトップの中国が54.4%、日本はわずか1.9%で、インドの13.7%にも、大きく水をあけられています。衝撃的な数字でした。

 第2章「自動車産業は空洞化するか」では、自動車産業においても、海外生産が猛烈な勢いで進行しており、自動車産業の国内生産も電機産業と同じ道をたどろうとしていることが明らかにされます。2015年の海外生産比率をみると、トヨタが64%。つまり、トヨタと名の付く車の64%は、海外でつくられたものということです。日産に至っては、82%。ホンダは84%です。私の愛車も、海外でつくられた可能性のほうが大きいというわけです。「十数パーセントしか母国で生産しない企業にとって『母国』という言葉は、もう意味を失っている。」と著者は指摘します。

 そのうえで、第3~6章では、政府の経済政策の検討をおこないます。とりわけ焦点になっているのが、米国を中心としたグローバル企業による日本の新たな「属国化」の問題です。米国企業は、自国と他国のあらゆる分野への自由な参入や、各分野への参入障壁(規制)を取り除く「規制撤廃」政策を他国に強制することを米国政府に要求した。そして、米国政府と企業が、真っ先にかつ徹底してこうした要求を突き付けたのが日本だったというわけです。

 事実、90年代以来、毎年膨大な項目からなる要望書(年次改革要望書、等)が米国から突き付けられ、経済と制度のあらゆる面の改変が要求されてきました。「構造改革」「規制撤廃」「民営化」等々、その実現のなかで、日本企業の競争力は大きく毀損され、日本経済の強さの根源も破壊され、日本市場は「開放」されていったということです。安倍成長戦略もそのほとんどすべての項目が、こうした米国の要求にもとづくものです。

 ものづくりを放棄した日本が、いま目指しているのが、アジアへのインフラ輸出。これもまた、米国のアジア戦略の一翼を担って進められている実態も暴露されています。

 770ページという大著を、しかも馴染みのない経済の本を、簡潔に紹介するのはとても無理な話ですが、たいへん刺激的で興味深い本でした。
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 他に、治安維持法犠牲者で県内でただ一人の生存者となった杉浦正男さん(104歳)が、傘寿を記念して1996年に出版した「若者たちへの伝言――戦中戦後を貫く階級的労働組合の赤い糸」を興味深く読みました。近くに住むMさんが、亡くなられたご主人の蔵書を整理していて見つけたとのことで、いただいた本です。ご主人は、長く東京都内で労働組合の専従の書記として活躍された方で、おそらく杉浦さんとも親交があったのではないかと思います。

 戦時下での、「出版工倶楽部」の活動や歴史、治安維持法で検挙されたときの様子、戦後急激な高まりをみせた労働運動の歴史、階級的労働組合・産別会議やその後のこと等々、現場を生き抜いてきた人ならではの貴重な証言であり、記録になっています。Mさん、貴重な書籍を本当にありがとうございました。

 さらに、遠山郷・下栗(長野県飯田市)の自然と集落、そこに生きる人々の暮らしを収めた白鳥悳靖(しらとり よしやす)さんの写真集「天空の里」(新日本出版社)を楽しみました。白鳥さんも、花見川区在住です。先日、「小松さん、本買ってくださいよ」と、白鳥さんから直接声をかけられました。「しんぶん赤旗」に大きな宣伝が載っていたので、知ってはいましたが、まだ購入はしていませんでした。もちろん割引きで売ってくれました。身近に、こんな素晴らしい写真家がいたなんて気づきもしませんでした。
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 ほのぼのと温かい写真の合間に、そこで暮らす里人の言葉が紹介されています。「こんな山奥でも住めば都でね。みんな人情深くて助け合う力が村にはある。今は、畑仕事が生きがい。豆でも何でも、とりあげる(収穫する)楽しみは大きいよ。」80代のおばあの言葉、表情が素敵です。ぜひ、ご一読を。
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 不破哲三さんの「党綱領の未来社会論を読む」も、もちろんさっそく読みました。わかりやすい解説で、これからの綱領講座に生かしていきたいと思いました。

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