韓国・徴用工問題――日本政府も最高裁も個人の請求権を認めてきた

19.08.25

 徴用工問題に端を発して、日韓関係がきわめて重大な事態を迎えている。

 昨年秋、韓国大法院(最高裁)は、元徴用工の訴えを認め、「日本の植民地支配と直結した反人道的不法行為」との判断を示し、企業の賠償責任を認めた。

 これに対し、安倍首相をはじめ日本政府は、1965年の「日韓請求権協定」によって解決済みと全面否定。韓国側からの再三の話し合い要請・働きかけを無視し続け、報復措置として安全保障上の貿易管理の優遇対象国から韓国を除外するという態度に出た。政治的紛争の解決に貿易問題を使うという「政経分離」の原則に反する、これは「禁じ手」だ。

 これに対して、韓国側が「日韓軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)の破棄を決定し、その終了を通告してきた。

 マスメディアは、安倍政権に歩調を合わせ、まるで戦前を思わせるような「嫌韓」「反韓」の大キャンペーンを張っている。しかし、メディアが決して報じようとしない問題がある。一つは、「日韓請求権協定」で「完全かつ最終的に解決」したのは、国家間の問題で「個人の請求権」は消滅していないということ。もう一つが、1910年から終戦までの植民地支配の実像と徴用工の実態だ。

 個人の請求権は消滅していないということは、実は、日本政府が国会答弁などで繰り返し表明してきたことだ。

 1991年8月27日、参院予算委員会で当時の柳井俊二外務省条約局長が、請求権協定第2条について「これは、日韓両国が国家として持っている外交保護権を相互に放棄したこと」であり、「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」と明確に答弁していた。

 昨年11月、衆議院の外務委員会で日本共産党の穀田恵二議員が、この柳井答弁を示して、「これは間違いないか」と、河野外務大臣に迫った。河野大臣は「個人の請求権が消滅したと申し上げるわけではございません」と、答弁せざるを得なかった。日本政府の「請求権協定に明白に違反」との主張は、土台から崩れている。

 ついでに言えば、昨年12月に超党派の日韓議員連盟代表団が訪韓し、ムンジェイン大統領とも懇談しているが、その際、自民党の額賀福志郎議連会長も「個人の請求権は残っている」と発言し、ムン大統領も「個人の請求権は消滅していないということは重要なことだ。この立場に立てば円満な解決がはかられるのではないか」と応じていた。

 「個人の請求権は消滅していない」という認識は、政府答弁だけでなく、日本の最高裁でも示されてきた。

 2007年4月、中国人の強制連行被害者が日本企業の西松建設に賠償を求めた判決で最高裁は、中国との賠償関係等については外交保護権は放棄されたが、「(被害者個人の賠償請求権については)請求権を実態的に消滅させることまでを意味するものではなく」と指摘。さらに被告に対し「任意の自発的な対応をすることは妨げられない」と述べた。判決後、西松建設は、強制連行被害者との和解に応じている。この最高裁の解釈は、当然、韓国・元徴用工の賠償請求権についても当てはまる。

 実際、1999年4月、朝鮮人・金景錫(キムギョンソク)さんと日本鋼管の間では、和解が成立している。判決では、過酷な労働実態や金さんがストライキの首謀者だとされ、会社側の人間や憲兵などから拷問・暴行を受けた経緯を詳細に認定した。

 徴用工として深刻な人権侵害を受けた被害者の方々には、言うまでもなく時間がない。国連の国際労働機関(ILO)も、すでに2009年に「年老いた強制労働者が訴えている請求に応える措置を取ることを望む」という勧告を発表している。

 日本政府の頑なな姿勢、それにすり寄り、国民を煽るメディア。徴用工問題に端を発した日韓関係の悪化、日本の対応を世界が見ている。

 同じ敗戦国であるドイツは、ナチスの戦争責任を認め、ファシズムのもとでの非人道的な罪を償おうと努力してきた。その「補償」額は、10兆円を超える額に達しているとの指摘もある。それだけでなく、ドイツは、かつて自国が犯した加害行為・不正義を認め、その真実を明らかにし、責任を明確にし、被害者の救済および名誉・尊厳の回復に努め、そのことによって、国際社会の信頼を確保してきている。

 まずは、「個人の請求権は消滅していない」との、日韓両国政府、大法院と最高裁の四者共通の認識に立って、両国政府が冷静な話し合いを行うべきである。


 この問題をめぐるメディアの問題、植民地や徴用工の実態等については、また後日書きたいと思う。

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